どうもstsです。
本日のテーマは「将棋」です。
今回は2012年~2014年にかけて築かれた「三霊獣」時代をご存知でしょうか。羽生善治九段、森内俊之九段、渡辺明九段の三人でタイトルを独占し、この三人だけでタイトルを回していた時期がありました。今回はその時代を振り返ってみました。
それではさっそくどうぞ!
※タイトル・段位は当時のものです。
【2011年度】
三霊獣時代が始まる前の2011年度は羽生世代が復権。名人の座に森内俊之九段が返り咲き、王位を羽生善治二冠が広瀬章人王位から奪取、年度末には棋王を郷田真隆九段、王将を佐藤康光九段が共に久保利明二冠から奪取。タイトル7つの内5つ、タイトルホルダー5人の内4人が羽生世代と、下の世代に渡りかけていた覇権を再び手繰り寄せました。
※「緻密流」と呼ばれる深い読みで知られる佐藤康光九段。この王将戦ではゴキゲン中飛車に対し、▲5七玉と上がる顔面受けを披露。そのインパクトは絶大で、この年の升田幸三賞を受賞しました。
※本格派居飛車で知られ、その格調高い指し手と棋風から、「一刀流」や「剛直流」とも呼ばれる郷田真隆九段。この棋王奪取により、約10年ぶりとなるタイトル獲得。40代に入っても王将を奪取し、10代~40代それぞれの年代でタイトルを奪取しています。
一方、唯一の羽生世代ではないタイトルホルダーとなったのが渡辺明先生。竜王防衛に加え、羽生先生から王座を奪取。しかも羽生先生の王座20連覇を阻むという快挙でもありました。
※この年度の将棋界をまとめた将棋年鑑。「羽生世代の逆襲」というタイトルで巻頭特集が組まれています。
【2012年度】
年度は変わり、春の名人戦、リターンマッチとなった羽生先生の挑戦を森内先生が跳ね返し連覇。
※この年の名人戦のPV。この時代は将棋のタイトル戦がニコニコ生放送で配信されていた時代。タイトル戦前にはPVが作成されることがしばしばありました。
その後の棋聖戦、王位戦は羽生先生が防衛。そして羽生先生はタイトル戦に出ながら、王座戦への挑戦権も獲得します。
そしてこの王座戦で羽生先生はリターンマッチに成功!決着局となった第4局は、終盤劣勢と思われた羽生先生が銀のタダ捨てが詰めろ逃れの詰めろになっているという絶妙手を放ち、千日手に。この将棋は指し直し局も含めてその年の名局賞になるという熱戦でした。
これでタイトルは7つの内、6つが羽生世代の手中に。そして竜王戦では丸山忠久九段が2年連続で挑戦者として登場。丸山先生も羽生世代の一人であり、これでもし丸山先生が奪取すれば7大タイトルを5人の羽生世代で分け合うという事態になります。
しかしここからが渡辺先生の意地。竜王戦を4勝1敗で防衛し、9連覇を成し遂げると、棋王戦・王将戦と連続でタイトル挑戦を決めます。そして年明け、勢いそのままに両方のタイトルを奪取!一気に三冠へと昇り詰めました。
※「魔王」の異名でも知られる渡辺明先生。固い玉形から今にも切れそうな細い攻めを繋げる戦い方は平成将棋を代表する棋風であり、「現代将棋の申し子」とも呼ばれた。自身を題材にした『将棋の渡辺くん』も大人気となっています。
※この年度の将棋年鑑。表紙を飾るのは王座を奪取し三冠となった羽生先生と棋王・王将を奪取し、同じく三冠となった渡辺先生。
【2013年度】
年度が変わり、名人戦。この年も羽生先生が挑戦権を獲得し、3年連続の同一カード。しかしこの年も森内先生が盤石の防衛。2日制、名人戦での強さを見せます。
続く棋聖戦。挑戦権を獲得したのは渡辺竜王。これを取れば四冠となりタイトルの過半数を占めることとなり、一気に将棋界の頂点に立ちます。
※棋聖戦のPV。羽生先生と渡辺先生、それぞれの棋風や考え方の違いが如実に出ているところが面白いです。
史上初の三冠同士とタイトル戦となった戦いは、羽生先生が防衛。まだ世代交代はさせないと阻みます。
羽生先生は王位戦、王座戦と夏のタイトル戦も防衛。三冠を守ります。そして竜王戦では、森内名人が登場。
※この年の竜王戦のPV。「将棋の神を守護し続ける三体の霊獣。聖なる七つの頂に立つ」として、渡辺先生、森内先生、羽生先生を紹介。ここで一気に「三霊獣」という言葉が使われ、広まりました。
当時渡辺先生は竜王を9連覇中。竜王戦では無類の強さを誇っていましたが、森内先生が奪取。ついに渡辺先生の竜王の座が崩れました。これで森内先生は名人に加えて竜王を獲得。将棋界の二大タイトルを手中に収めました。
※受けに定評があり、「鋼鉄の受け」や「鉄板流」の棋風で知られる森内俊之九段。羽生先生とは小学生時代からのライバルとして切磋琢磨してきた関係。2日制の七番勝負では無類の強さを誇っています。
そして畳みかけるように年明けの王将戦では挑戦者に羽生三冠が登場。今度は羽生先生が奪取すれば四冠という状況。戦いはフルセットにまでもつれ込みますが、最終局は渡辺先生がゴキゲン中飛車を使い、防衛。棋王戦でも防衛を果たし、二冠を保持します。
※この年度分をまとめた将棋年鑑。表紙は三冠を守った羽生先生と竜王・名人の二大タイトルを手中に収めた森内先生。二人はこの年の名人戦で対決しました。
【2014年度】
この年の名人戦、挑戦者として名乗りをあげたのは羽生善治三冠。3年連続挑戦者となり、4年連続の同一カード。このタイトル戦を羽生先生はストレートで勝利。4年ぶりに名人座に返り咲き、四冠になります。
※先日、日本将棋連盟の会長を退任した羽生先生。この期間を見ても分かるように、平成の将棋界は常に羽生先生を中心に動いてきました。将棋界のスーパーレジェドとして令和の将棋界でもタイトル挑戦を決めるなど活躍し続けています。
続く棋聖戦。こちらの挑戦者となったのは、森内先生。名人戦のリベンジを果たせるか注目が集まりますが、敗退。羽生先生の充実ぶりが伺えます。羽生先生はそのまま、王位戦も王座戦も防衛します。
そして竜王戦。挑戦者として名乗りをあげたのは、糸谷哲郎七段でした。挑戦者決定戦で羽生名人を破っての挑戦でした、6期ぶりとなる海外対局となるハワイでの対局で勝利をあげると、勢いそのままにタイトル奪取。「竜王ドリーム」を掴みました。
※「ダニー」の愛称で親しまれる糸谷先生。当時から早指し棋戦での強さは有名だでしたが、持ち時間の長い2日制でも強いことを証明。現在はA級棋士、そして日本将棋連盟理事としても活躍しています。
一方敗れた森内先生は無冠に。これで羽生先生、森内先生、渡辺先生の3人でタイトルを独占する時代は終了。
その後年明けの王将戦で郷田先生が渡辺先生からフルセットの末タイトル奪取。棋王戦では五冠を目指し挑戦してきた羽生名人が相手ででしたが、こちらは防衛。タイトルホルダーも4人となり、「三霊獣」の時代は終わりました。
※この年度をまとめた将棋年鑑。表紙は羽生名人。羽生先生はこの年度、竜王戦では挑戦者決定戦、王将戦もプレーオフまでこぎつけ、大車輪の活躍だでした。
以上のようになっています。この「三霊獣」の時代は期間で言えば2年近くでしたが、3人がそれぞれのタイトル戦にもよく登場していたこともあってか、もっと長く続いている印象があります。
そして森内先生は2日制の七番勝負、羽生先生は春~夏のタイトル戦、渡辺先生は秋~冬のタイトル戦で無類の強さを発揮するというそれぞれの特徴がよく出ている期間でもありました。
将棋界でまた「三霊獣」と呼ばれるような時代はくるのでしょうか?
ではまた!
※その他、平成の将棋界の出来事を振り返った記事はこちら。こちらもよければご覧ください。