平成将棋界、相掛かりの歴史

どうもstsです。

今回のテーマは「将棋」です。

過去2回取り上げた、平成将棋界の戦術歴史シリーズ。矢倉、角換わりとやってきました。

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そして今回取り上げるのは相掛かりです。

角道を開けずに先後共に飛車先を歩を突っ切ることで始まる戦型。かつては相居飛車の中でも人気がなく、プロアマ問わずあまり見かけない戦型でもありました。しかし令和に入り大ブレイク中。今回はその相掛かりの平成での戦法の歴史を振り返ってみました。

さっそくどうぞ!

 

【塚田スペシャル】

昭和後期から平成最初期に流行った戦法。飛車先の歩を交換した後、後手が銀を上がるために歩を突いた瞬間を狙って、2筋に歩を再度合わせて飛車を走り、横歩取りの要領で突きだした歩をかすめ取る。

圧倒的な攻撃力を誇った塚田スペシャルも対抗策が登場。谷川浩司先生が決定版とも呼べる形を平成初期に打ち出し、平成の間、塚田スペシャルは出ることが減った。現代はソフトの影響もあり、その対策を取られても互角と言われている。

そんな中、令和に入り相掛かりが再度流行。飛車の歩を交換するタイミングを図るようになり、横歩を取るという思想は、歩を合わせるか、後から突くかという違いで、思想はこの塚田スペシャルを汲んでいるといえる。戦法自体は消えたものの発想や思想自体は現代相掛かりのベースとして生き続けている。

 

 

【ひねり飛車】

今なおアマ界では出現する戦法。飛車先の歩を交換して、2六の浮き飛車に構えたかと思いきや、その飛車を横にスライドさせ7六の位置にして石田流のように構える。升田流や丸田流、近年では耀龍ひねり飛車など数多くのバリエーションが存在する。

飛車先の歩の交換で、一歩手持ちにしている上に振り飛車の理想形でもある石田流に組み替えれるという展開から、「将棋で必勝法が生まれるのならばひねり飛車ではないか」とまで一時期は言われた戦法でもある。

平成初期には時折指されていたひねり飛車。しかしその見る影は徐々に薄れていく。勝率が低かったというのは事実としてあるが、ではなぜ勝率が低かったのか、決定版的な対策は何だったのかと聞かれてると難しい。居飛車から振り飛車に切り替えるという作戦、自然に薄れていったところなど、どこをとっても不思議な戦法である。

 

 

【中原流相掛かり】

中原誠十六世名人が好み多用した戦法。ひねり飛車同様、2六の浮き飛車に構えた後は、早繰り銀の要領で銀を繰り出していく。銀、桂馬、さらには角などを活かして相手をジワジワ追い込んでいく。

この戦法の特徴は、銀を3七まで上がり、▲3五歩と先に突き捨てから▲4六銀と上がる山田定跡のような独特の呼吸の仕掛け。また4六に銀を上がった後もすぐには3五の歩を取り返さなかったり、銀の押し引きなど独特の感覚を必要とし、「中原先生にしか指しこなせない」などと言われた。

こちらも平成初期にプチブレイクしたが、やはり独特の感覚を必要とするからか、現在のプロ界ではひねり飛車以上に見かけなくなった。しかし決定版の対策はこちらもなく、先手番で積極的に用いれるためアマ将棋界では一周回って知らない人も多く、一発刺さりやすい戦法だと個人的には思っている。

 

 

【相掛かり棒銀(UFO銀)】

平成相掛かりで最も流行った戦法。飛車先を交換して2八の引き飛車にした後、銀を3八→2七→3六と棒銀の要領で運ぶ。ここで銀を3六にあがるのがこの戦法の特徴。後手は3六の銀を前に出させなくするため、角交換後△3三桂と跳ねる。それを見た先手は▲4六歩と突いて、腰掛け銀などに組み替える。

2筋から出てきた銀がフワフワ移動して色んな位置に動いていく様から「UFO銀」とも呼ばれた。後手は様々な対策があったが銀冠に構えることが多かった。

平成相掛かりはでは、この形がかなり多く指され、平成相掛かりを代表する戦法となった。しかしこの相掛かり棒銀も知らぬ間に指されなくなり令和では自然消滅している。飛車先を早めに切り、銀を早く繰り出す戦法のため、飛車先の歩の交換のタイミングを重要視する令和の相掛かりに合わなくなったか。

 

 

【Alfa Zero流】

平成後期に現れた相掛かりの新機軸。相掛かりにもソフトの影響が現れ始める。GoogleDeepMindが作った将棋ソフト「Alfa Zero」が同じくコンピュータソフトのelmoとの対戦でこの形を多用していたことが命名の由来。

▲5八玉▲3八銀という現代相掛かりの特徴ともいえる形から、3筋の歩を突いて▲3七桂と跳ねるのがこのAlfa Zero流の骨子。横歩を取ってない青野流のような形。3七にいるのが桂馬というのが特徴でこの桂馬が跳ねて、攻撃に参加することも視野に入れいている。

この戦法自体、誕生してから日も浅く、まだまだわからないことも多い。何より「Alfa Zero」の棋譜も少なく、公開もされていないため、まだまだ未開拓の分野。令和のこれからの定跡発展に期待が高まる。

 

 

以上のようになっています。

令和に入り角換わりと並んで圧倒的な人気を誇る相掛かり。かつては浮き飛車と引き飛車の組み合わせなどの問題が多く、なかなか定跡が整備されにくく研究しにくい面がありましたそのため正直こんなに流行る日が来るとは夢にも思いませんでした。

「相掛かりは相手が受けて立つか(当時は左美濃急戦など登場前で2手目△3四歩からウソ矢倉にする手法もあった。)」「相掛かりは力戦趣向の戦法」という言葉や概念が平成の間は強かった気がします。しかし令和の現代では死語というか消えた概念となりました。

しかし相掛かりは本当に不思議な戦法というイメージがあります。どの戦法もこれといった決定版の対策がないまま自然と姿を消し、浮き飛車が流行ったり、引き飛車が主流になったりします。そして見なくなったと思ったひねり飛車が形を変え復活したりと、矢倉や角換わりに比べまだまだ掘り下げられていない分野が広いイメージがあります。

これからも流行り続けるであろう相掛かりの動向にも注目です!

ではまた!

 

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