名人戦挑戦者、歴代最年少記録

どうもstsです。

昨日、第81期A級順位戦プレーオフが行われ、藤井聡太竜王広瀬章人八段による対局が行われました。結果は藤井聡太竜王の勝利。20歳での名人挑戦権獲得となり、話題を呼んでいます。

では名人挑戦者の歴代最年少記録はどうなっているのでしょうか。歴代トップ10をまとめてみました。

それではさっそくどうぞ!

※記録の年齢は、挑戦権を獲得した日付ではなく、名人戦の第1局が行われる(行われた)日付とします。

 

 

1位加藤一二三九段 20歳3ヶ月

名人戦で史上最年少の挑戦者となったのは、昨年将棋界2人目の文化功労者となった加藤一二三九段です。加藤先生は史上初の中学生棋士としてデビューすると、毎年昇級。19歳でA級という今なお破られていない最年少記録を作ると、A級2年目で名人挑戦権を獲得。こちらが歴代最年少記録となりました。

注目された名人戦は、当時すでに十五世名人の資格を得ていた大山康晴名人(当時)。結果は大山先生が名人としての意地を見せて、防衛となりました。加藤先生はその後、名人をなかなか獲得できませんでしたが、42歳の時に悲願の奪取を果たしました。

加藤先生は矢倉を得意とする居飛車党。対振り飛車に対しては、棒銀を多用していたことは有名でした。また現役晩年になっても衰えぬ闘志で戦い続け、最年長現役記録、最年長勝利記録、通算最多対局数記録など、最年少記録だけでなく、最年長記録も幾つも打ち立てました。

 

 

2位藤井聡太竜王 20歳8ヶ月

2位は、昨日名人挑戦権を獲得した藤井聡太竜王。藤井先生は、史上最年少のプロ棋士としてデビュー。デビュー後いきなり歴代1位の記録を塗り替える29連勝を記録。順位戦ではC級1組で一度足踏みした以外は毎年昇級を重ね、今期の初参加のA級でもプレーオフの末、挑戦権を獲得しました。

藤井先生が初からの名人戦で戦う相手は、渡辺明名人。渡辺名人とは現在棋王戦でも戦っており、棋王奪取+名人奪取となれば史上2人目の七冠達成者となります、

藤井先生は、角換わりを得意とする居飛車党。中でも詰将棋で鍛え上げれた終盤力は歴代No.1と言われています。また序中盤で築いたリードをジワジワ広げて勝利まで運ぶ様は、AI評価値のグラフから「藤井曲線」と呼ばれています。様々な最年少記録を塗り替え続ける「令和の天才」の活躍ににまだまだ目が離せません。

 

 

3位谷川浩司十七世名人 21歳0ヶ月

3位は、昨年十七世名人を特例で現役のまま襲位した谷川浩司十七世名人。谷川先生は史上2人目の中学生棋士として14歳でプロ入り。C級2組で一度足踏みした以外は毎年昇級。A級1年目でも好成績を収め、中原誠二冠(当時)とのプレーオフを制し、名人挑戦権を獲得しました。

谷川先生は、当時悲願の名人を獲得した加藤名人と対決。七番勝負を4勝2敗で制し、今なお破られていない21歳という史上最年少で名人の座に就きました。

谷川先生は角換わりを得意とする居飛車党。谷川先生も終盤を得意としており、誰も予想しないところから一気に相手の王様を寄せていく様は、「光速流」「光速の寄せ」と呼ばれ、ファンを魅了し続けています。現在は還暦を迎え、大山十五世名人の通算勝利数を目標に戦いを続けています。

 

 

4位羽生善治九段【十九世名人資格者】 23歳6ヶ月 

4位は、現在王将戦の挑戦者として藤井王将と世紀の一戦を戦い話題を呼んでいる羽生善治九段。羽生先生は史上3人目の中学生棋士として15歳でプロ入り。順位戦ではC級2組~B級2組で1年ずつ足踏みするもののB級1組は1期抜け。A級でも1期目で挑戦権を獲得。谷川王将(当時)とのプレーオフを制しての挑戦でした。

羽生先生は名人戦で米長名人と対決。羽生先生はこの名人戦で見事奪取。五冠へと復帰を果たし、夢の七冠独占のヴィクトリーロードを進めていきました。

羽生先生は居飛車振り飛車、急戦・持久戦問わずあらゆる戦法を指しこなすオールラウンドプレーヤー。七冠独占、永世七冠達成、通算1500勝達成など将棋界の記録を塗り替え続ける生ける伝説で、昨年は王将リーグ全勝でタイトル挑戦を決めるなど、まだまだレジェンドとして活躍を続けていきます。

 

 

5位中原誠十六世名人 24歳7ヶ月

5位は「棋界の太陽」と呼ばれ、将棋界で一時代を築いた中原誠十六世名人です。中原先生は18歳でプロ入りすると、順位戦で加藤先生以来の順位戦で毎年昇級。A級では2年目で挑戦権を獲得。しかもこの時はA級では初となる全勝(8勝0敗)での挑戦権獲得となりました(この年は休場者がいた関係でA級参加者は9名。)

初となる名人戦の相手は、当時名人13連覇中(!)の大山名人(当時)。先にカド番に追い込まれたのは中原先生でしたが、そこから意表の振り飛車連採で見事奪取となり、当時史上最年少の24歳で名人の座に就きました。

中原先生は矢倉と相掛かりを得意とする居飛車党。対振り飛車に対しては、天守閣美濃や玉頭位取りを得意としました。戦いの中、自然な指し回しで、勝利を手繰り寄せる様は「自然流」と呼ばれ、プロ・アマ問わず多くの人が手本としました。また桂使いの名手としても知られました。

 

 

6位大山康晴十五世名人 25歳0ヶ月

6位は「将棋界の巨人」大山康晴十五世名人。大山先生は18歳でプロ入り。プロ入り当初は順位戦の制度はありませんでした。23歳の時に第1期順位戦にB級で参加(当時はA・B・Cの3クラス)。第2期ではB級1位の成績で挑戦者決定戦に進出(当時はA級1位~3位とB級1位で挑戦者決定戦を行うルール)。その戦いを勝ち抜き挑戦権を獲得しました。

名人戦では、塚田正夫名人に挑戦するも敗退。大山先生はその後名人を獲得し、連続13期、通算18期獲得し、十五世名人となりました。

大山先生は受けを得意とする振り飛車党。角道を止める振り飛車で、当時は急戦で挑み掛かってくる居飛車の攻めに対して卓越した対局観と受けの技術で幾度となく逆転劇を演じてきました。大山先生は当時のタイトル独占(三冠~五冠時代)を複数回、複数年達成。歴代最強といわれる昭和の時代を彩った名棋士です。

 

 

7位森内俊之九段【十八世名人資格者】 25歳6ヶ月

7位は「鋼鉄の受け」の異名で知られる森内俊之九段。森内先生は16歳でプロ入り。順位戦では順調に昇級を重ね、A級1期目で見事挑戦権を獲得しました。また森内先生は順位戦で26連勝という歴代1位の記録を保持しています。また後に順位戦史上初のA級での9戦全勝という記録も作りました。

名人初挑戦の相手は同学年のライバル、羽生名人。当時共に25歳、合わせて50歳の名人戦は最年少記録で話題を呼びましたが、結果は敗退となりました。

森内先生は矢倉を得意とする居飛車党。中でも受けと得意とする棋風は「鉄板流」と呼ばれています。また名人戦の舞台では無類の強さを発揮、通算で8期獲得。羽生先生に先んじて永世名人の資格を獲得しました。近年は自身のYouTubeチャンネルを開設。様々な動画を投稿しており、普及活動にも力を注いでいます。

 

 

8位斎藤慎太郎八段 27歳11ヶ月

8位は爽やかなルックスで女性ファンからの人気も高く、「さいたろう」のニックネームでも知られる斎藤慎太郎八段。斎藤先生は18歳の時にプロ入り。順位戦ではC級1組と

B級1組で3年ずつ費やした以外は、順調に昇級。A級では1期目で見事挑戦権を獲得し、名人戦の舞台に登場しました。

名人戦では渡辺名人に挑戦。結果は敗退しますが、その翌年再びA級で1位を取り、2年連続で挑戦権を獲得。長い持ち時間での強さを発揮しています。

斎藤八段は、角換わりを得意とする居飛車党。詰将棋も得意としており、終盤では切れ味鋭い攻めを披露します。またプロ入り当初には電王戦に出場し。コンピュータソフトと対戦した棋士として有名になりました。結果は見事勝利を収め、人間、そして棋士としての意地を見せました。

 

 

9位佐藤天彦九段【実力制第十三代名人資格者】 28歳2ヶ月

9位は「貴族」の愛称でお馴染み、佐藤天彦九段。天彦先生は18歳でプロ入り。プロ入り前、三段リーグで次点を2回獲得ししてフリークラス入りの権利を得ながらその権利を蹴り話題を呼び、その後2位の成績でプロ入りを決めました。プロ入り後はC級2組で4年を費やしますが、その後はハイペースで昇級。A級も1期目で挑戦権を獲得しました。

名人戦の舞台でも勢いそのままに羽生名人から名人を奪取。以後3連覇を果たし、引退後70歳で「実力制第十三代名人」を名乗る資格を得ています。

天彦先生は、横歩取りを得意とする居飛車党。終盤では粘り強い受けで簡単には土俵をわらないのが特徴です。数年前は振り飛車を連採して話題を呼びましたが、現在はまた居飛車メインで指しています。またファッションやブランド品へのこだわりが強いことで知られており、「貴族」の愛称の由来となっています。

 

 

10位佐藤康光九段【永世棋聖資格者】 28歳6ヶ月

10位は、日本将棋連盟会長として将棋界を引っ張り、支え続けている佐藤康光九段。康光先生は17歳でプロ入り。C級1組で4年費やしますが、その他のクラスでは順調に昇級。A級でも2期目で好成績を収め、羽生四冠とのプレーオフへ突入。この戦いを見事制し、名人挑戦権を獲得しました。

名人戦では谷川名人と対決。フルセットまでもつれる激闘となりましたが、この戦いも見事勝利。記念すべき実力制10人目の名人となりました。

康光先生は居飛車振り飛車も指すオールラウンダー。特に近年は向かい飛車を好んで指しています。「緻密流」と呼ばれる深い読みと丸太を振り回すかのような、誰にも真似できない序盤戦術と構想は、常に注目の的となっており、ファンを魅了しています。また棋聖のタイトルは通算6期獲得しており、永世棋聖の資格者となっています。

 

 

以上のようになっています。

歴代1位は加藤一二三九段でした。20歳3ヶ月というのは恐ろしい記録です。今回の藤井竜王ですら抜けない記録だったと考えると、いかに偉大で凄かったかよりわかりますね。

2位は藤井竜王。春からいよいよ名人戦の舞台に登場。八冠独占というヴィクリーロードへと繋がっていく戦いになります。

3位は谷川先生。当時の将棋界は、大山先生・中原先生・加藤先生といった熟練のレジェンド棋士が名人というイメージでしたが、それを一気に打ち壊した瞬間でもありました。当時の衝撃度はかなり凄かったと聞きます。

ランキング全体を通して見て、思ったのは羽生世代の棋士が3人も入っているということ。ちなみにランキングトップ10には入ってませんが、同じ羽生世代の丸山忠久先生も29歳で名人挑戦者となりました。羽生世代から若手時代からいかに強かったかがわかりますね。

さて、今回名人戦。渡辺名人にとっては4連覇が懸かり永世名人へあと1期とできるか、藤井竜王は史上最年少の名人記録を塗り替えれるのか。記録面はもちろん、名人と竜王による、いわゆる「竜名戦」となる今期名人戦。非常に楽しみにしています!

 

※名人獲得の最年少記録、歴代名人のまとめ記事はこちら。こちらも是非併せてご覧ください。

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