王将戦、記憶に残る勝負10選

どうもstsです。

本日のテーマは「将棋」です。

先日、羽生善治九段が王将リーグを6戦全勝で挑戦権を獲得。藤井聡太王将への挑戦権を獲得しました。

2023年の年明けから始まる王将戦、否が応でも注目が集まります。ということで今回は王将戦の歴代名勝負10選を個人的に選んでまとめてみました。

王将戦の歴史を少しでも感じとっていただければ幸いです。

さっそくどうぞ!

 

①まさかの対局拒否。陣屋事件勃発。(第1期)

木村義雄名人VS升田幸三八段

1950年に一般棋戦として創設された王将戦。その第1回王将戦では木村義雄名人(当時)が優勝しました。そしてその翌年、王将戦はタイトル戦に昇格。新たに数えなおし第1期王将戦が始まりました。

この王将戦、最大の特徴は「指し込み制度」。3勝0敗や4勝1敗など3勝差がついた時点で決着。残った対局は平手と半香落ちを繰り返すため「爆弾棋戦」とも呼ばれました。

第1期の挑戦者として名乗りを上げたのは升田八段。「名人に香を引いて勝つ」と宣言して大阪から出てきた若手でした。すると第1期から升田先生は4勝1敗の成績を残し、いきなり名人が指し込まれます。しかし升田先生は続く半香落ちの対局を対局当日に現れず、ボイコット。対局拒否は重く受け止められ、1年間の対局停止処分が下され、当時の将棋連盟理事も責任を取り、総辞職するなど大波乱のスタートとなりました。

 

②将棋界唯一の出来事。名人に香を引いて勝つ。(第5期)

大山康晴王将VS升田幸三八段

対局は実現しなかったものの名人を指し込んだ升田先生でしたが、その後、その王将の座に就いたのは自身の弟弟子大山康晴先生でした。大山先生は木村先生から名人も奪取し、5連覇して木村先生に次ぐ十五世名人の資格を獲得。一方、升田先生は当時名人を獲得できておらず、タイトル獲得も第1期の王将のみという状況でした。

しかしここからが兄弟子の意地。逆襲が始まります。升田先生は九段のタイトルを奪い、久々のタイトルを獲得すると、王将戦の挑戦権も獲得。そこで大山先生との王将で開幕3連勝で王将奪取を確定。当時王将の大山先生は名人も保持しており、なんと2度目の名人を指し込む形となりました。いよいよ香落ちとなる第4局。なんと升田先生はこの対局をも勝利。名人に香を落として勝つ、という歴史的快挙を成し遂げました。

升田先生はその翌年度の名人戦も挑戦者となり、名人の座も奪取。史上初となる全冠独占を成し遂げました。大山先生が握りかけていた覇権を自らの元へ手繰り寄せました。

 

③悲願の初タイトル。全冠独占の牙城を崩す。(第12期)

大山康晴王将VS二上達也八段

時代は大山先生全盛期に突入。大山先生は当時のタイトル5つを手中に収め全冠独占を達成。二上先生は、プロ入り当初から、加藤一二三先生とともに大山先生を崩す若手有望棋士と期待されながら、タイトル挑戦を5回果たすも、全て大山先生の前に阻まれていました。

そんな中第12期王将戦。王将リーグは6勝1敗の好成績を収め、同成績だった有吉道夫先生とのプレーオフを制し、自身3度目の王将戦の挑戦権を獲得します。その王将戦でも勢いそのままに4勝2敗で王将を奪取。自身の天敵、大山先生にタイトル戦で初勝利を収めるとともに3年続いた大山先生の全冠制覇を崩した瞬間でした。

しかし翌年大山先生はリターンマッチで王将を奪い返し再び全冠独占を果たします。大山先生の強さが際立つ時代でした。

 

④衰え知らずの大巨人!56歳での奪取劇。(第29期)

加藤一二三王将VS大山康晴十五世名人

1972年の王将戦で中原先生に自身最後の一冠の王将を奪われ、無冠となった大山先生。以降タイトル保持者に復帰することはあっても、やはり中原先生に覇権が移ったこともあり、1977年には無冠となってしまいます。

年齢も50代半ばを迎え、年齢的な厳しさが迫ってくる中、第29期王将戦にて6勝1敗の好成績で挑戦権を獲得。すると加藤一二三先生との王将戦においても4勝2敗で勝利。なんと56歳でタイトル奪取という今なお破られていない最年長記録を打ち立てました。

しかしこれで終わらないのが大山先生の凄いところ。翌年は米長邦雄棋聖の挑戦、さらにその翌年は中原誠名人を破り3連覇を達成。59歳でのタイトル防衛という最年長記録も打ち立て、当時の三強とも呼べる中原先生、米長先生、加藤先生を破っての3連覇は数字以上に価値のある記録、金字塔を打ち立てました。。

 

⑤「横歩も取れない男に」。波紋を呼ぶ発言。(第39期)

南芳一王将VS米長邦雄九段

王将戦の挑戦権を獲得した米長先生。開幕前のインタビューにて、「横歩も取れない男に負けては、ご先祖様に申し訳ない」と発言。南先生は当時流行していた横歩取りを指すことが少なく、この挑発的なコメントは話題を呼び、開幕前からこの王将戦には、大きな注目が集まりました。

結果的に第2局と第6局で後手番の米長先生が横歩取りの形に誘導。南先生は両局ともに横歩を取り、横歩取りの将棋は1勝1敗でした。シリーズはフルセットまでもつれ、米長先生が奪取。王将の座に就きました。

将棋の内容や対戦カード、結果が注目されることが多い将棋界。このような挑発的な発言が出るのは将棋界では少なく、王将戦の中でも一番大きな話題に残るフレーズはこの発言かもしれません。

 

⑥夢の七冠阻む。関西の英雄。(第44期)

谷川浩司王将VS羽生善治竜王名人

時代は平成に移り、羽生善治先生が登場。タイトルを続々と手中に収めていき、ついに六冠まで到達。夢の七冠独占に向けて、最後の一冠、王将戦の挑戦権を獲得。将棋界に注目が集まります。

しかし第1局と第2局の間、谷川先生は未曽有の大震災、阪神淡路大震災で被災します。大変な状況下でもありながら、対局をこなし七番勝負はフルセットまでもつれ込みます。最終局となった第7局は羽生先生の先手で矢倉になるも千日手。指し直し局も矢倉となり、谷川先生が激闘を制し防衛を果たしました。

地震に巻き込まれ、苦しい状況ながらも七冠独占に挑みかかる最強の挑戦者を迎え撃ち、防衛する姿は感動的であり、関西だけでなく数多くの人に夢と希望を与えるシリーズとなりました。王将奪取を阻み、果たせなかった七冠独占。この時誰もが七冠独占は幻に終わったかと思いました。

 

⑦1年越しの夢。夢の七冠制覇!(第45期)

谷川浩司王将VS羽生善治竜王名人

昨年フルセットの末タイトルを防衛し、夢に終わったかに思えた七冠独占。しかし夢はこれで終わりませんでした。羽生先生はなんと七冠独占失敗の翌年度から始まるタイトル戦をなんと全て防衛。さらには王将リーグでも挑戦権を獲得。なんと一年前と同じ状態で王将戦の舞台に戻ってきました。

一年前は「矢倉シリーズ」と呼ばれたほど、矢倉が続きましたが、このシリーズは羽生先生が、四間飛車やひねり飛車、横歩取りなど様々な戦法を使う意欲的な指し回しを見せ、終始圧倒。結果4連勝でストレート奪取。夢の七冠独占を果たしました。

この時は、史上初の七冠独占が懸かっていたということもあり、将棋界が大注目された時でした。羽生先生もCM出演や結婚などもあり将棋界の枠を越えて有名な存在となり、「羽生フィーバー」とすら呼ばれました。

 

王将戦初の3連勝後の3連敗。勝負の行方は!?(第55期)

羽生善治王将VS佐藤康光棋聖

この年度のタイトル戦において羽生王将と佐藤棋聖は、棋聖戦王位戦王座戦と真夏の3タイトル戦で連続して激突、「炎の十七番勝負」と呼ばれました。そして年度を締めくくるかのように王将戦でも激突。中でも佐藤先生は王将リーグを全勝で挑戦権を獲得していました。

白熱の七番勝負がここでも予想されますが、羽生先生が開幕から破竹の3連勝。あっさり王手を掛けますが、これで終わらないのが佐藤先生。追い込まれたところからなんと逆に3連勝。世間一般でいう「逆王手」を掛ける形となりました。3連勝後の3連敗は王将戦史上初。結果は羽生先生が最終局で意地を見せて防衛を果たしました。

将棋界初の大逆転劇はお預けとなりました。この両先生はこの年度だけで23局対局。歴代1位の記録となっています。

 

⑨奇跡の3連続限定合い駒。悲願のタイトル奪取。(第59期)

羽生善治王将VS久保利明棋王

久保先生は、この1年前、自身初タイトルの棋王を奪取。そしてこの王将戦の挑戦権獲得。当時流行していたゴキゲン中飛車と石田流三間飛車を武器に活躍ていました。しかしこの王将戦の相手は絶対王者羽生先生。久保先生はこれまでタイトル戦で羽生先生は4度対戦していましたが、全て敗れていました。

久保先生が3勝2敗とリードして迎えた第6局。戦型はゴキゲン中飛車の超急戦。序盤早々から竜と馬を作り合い、激しい戦いに突入するこの戦型。お互いに切り合って進んだ最終盤。羽生王将が猛攻が久保棋王の玉を襲います。

しかしここで連続限定合い駒(他の駒の合い駒は全て詰み)で凌ぎ勝利。さらには実戦では現れませんでしたが、分岐の変化でさらに限定合い駒の変化がありました。奇跡とも呼べる3連続限定合い駒での決着はドラマ性もあり、この年の名局賞も受賞しました。

 

⑩夢の対戦カード!令和の天才VS平成の天才。(第72期)

藤井聡太王将VS羽生善治九段

史上最年少でプロ入りし、いきなり29連勝を達成した藤井聡太先生。新記録の29連勝を達成した際、当時三冠の羽生善治先生は「檜舞台で顔を合わせる日を楽しみにしています。」とコメントを出します。

しかし羽生先生は平成の終わりに竜王を失冠し、無冠。藤井先生は令和に入ってから初タイトルを獲得。運命の歯車は嚙み合わず、時代とともにすれ違ってしまいます。しかしこれで終わらないのが羽生先生。2022年、藤井王将への挑戦権を決める王将リーグにて、52歳ながら6戦全勝を達成。檜舞台を実現させました。

平成を彩り続けた天才棋士(羽生善治九段)と令和で活躍を続ける天才棋士(藤井聡太王将)、誰もが待ちわびた夢の対戦カードが2023年年明けから実現。歴史に刻まれる対戦カードは目が離せません。

 

以上のようになっています。

王将戦も70年を越える歴史があり、数の多くの名勝負・名局が生まれてきました。中でも名人に対して半香落ちで勝利した大山先生と升田先生の対局、七冠独占を懸けた谷川先生と羽生先生の対局は、王将戦の枠を越え将棋界の歴史に刻まれ続ける将棋です。

今年の王将戦、藤井先生と羽生先生の対局も歴史的に見て意義のある対戦カードとなりました。どのような将棋になるのか、対局内容にも注目です!

ではまた!